こんにちは、Mugiです。
社会情勢が目まぐるしくかわり、心も体も疲れやすい昨今、”密”とは無縁の自然のなかで過ごしたくなりますね。
でも忙しい日々の中で、週末のお休みだけを使って都内から行くことができる自然となると、場所も規模も限られてしまう……?
実は庄内空港を使えば、羽田からわずか1時間で、圧倒的な自然に囲まれた山形県の庄内地方へ行くことができるのです。
自然を尊ぶ日本古来の信仰が、今も人々の間に息づいている庄内地方で、パワースポットという言葉ではとても言い表しきれない神聖な気の満ちる地を巡る2日間。
終わるころにはすっかり生まれ変わったような気持ちになれる、1泊2日のモデルコースをご紹介します。
目次
出発 早朝便で時間を有効活用!羽田から1時間で行ける「庄内空港」
旅の始まりには、羽田発、庄内空港行きの早朝便の飛行機を利用しましょう。
午前の空気の清らかな時間帯の羽黒山を、思う存分体感するためです。
羽田からはなんと1時間で到着可能。預けた荷物が出てくるのもあっという間です。
庄内空港は鶴岡市と酒田市のほぼ真ん中に位置し、各観光スポットへのアクセスも良いため、庄内観光にうってつけ。
最初の目的地である羽黒山には、レンタカーを借りる手続きをしても9時過ぎには到着できるでしょう。
レンタカーは、隣県まで足を伸ばす場合は乗り捨てサービスを利用すると便利です。
住所:山形県酒田市浜中字村東30番3
1日目午前 ミシュラン・グリーンガイド三つ星!神聖な気の満ちる「羽黒山」
庄内空港から車で30分ほどで、山形県の中央にそびえる出羽三山のうちの一つ、「羽黒山」の随神門に到着です。
国内外から多くの方が訪れる出羽三山は、三大修験道のうちの一つ。
約1400年前に蜂子皇子が開山したと言われ、「羽黒山=現在」「月山=過去」「湯殿山=未来」と見立てられた三山をめぐることは、死と再生を辿る「生まれかわりの旅」として古来より信仰をあつめてきました。
たとえそんな歴史を知らずとも、参道の入り口の「随神門」に一歩足を踏み入れた途端、ここが特別な地であることを感じるに違いありません。
推定樹齢300年を超える杉の大木が、頭上はるか高くを覆いつくす、神々の領域。
圧倒的な自然の前では、自分の存在の小ささに畏怖さえ感じるほど。
薄暗い森に、幻のように差し込む日の光。ひんやりと澄んだ空気の中、頭上高くに鳥の声がこだまします。
修験道とは、古来より日本に根付いていた山岳信仰に、当時日本に入ってきたばかりの仏教が組み合わさって誕生した日本独特の宗教。
羽黒山では、羽黒派古修験道の山伏修行が現在も行われています。
山頂に至る約2kmの山道の両側に、延々と連なる無数の杉の大木。
その中でもひと際巨大な杉が、国の天然記念物に指定された「爺杉」です。
樹の周囲が10mにものぼるこの巨大な杉の老木は、なんと樹齢1000年!
羽黒山中において最大にして最古の杉です。
そしてその奥に気高い姿を見せているのが、国宝の五重塔。
心に圧倒的に訴えかけてくるこの神聖さは、言葉や文化が違っていても伝わるものなのでしょう。
海外からの評価も高く、杉並木や五重塔などはミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで三ツ星に選ばれています。
山頂に建つ三神合祭殿へは、ここから引き返して車で行くこともできますが、体力に自身のある人はぜひこのまま石段詣を続けてください。
ここからは一の坂、二の坂、三の坂と続く上り坂です。全部で2,446段の石段を歩く、1時間半の行程。
清らかな空気や苔のにおいを感じながら、ただひたすら自分と向き合う時間。
自然の見せる、険しさを伴う美しさに心を打たれながら、粛々と歩みを進めたその先に、何か心に得られるものがあるはず。
頂上には、茅葺では日本一の大社殿「三神合祭殿」が。
出羽三山の内、月山と湯殿山の神社は標高が高い場所にあり冬場は雪に閉ざされてしまうため、この羽黒山の大社殿で三つの山の神を合わせて祀っているのです。
今ここに自分があることに感謝をしながら、そっとお願い事を託します。
住所:山形県鶴岡市羽黒町手向羽黒33
庄内空港より車で約32分
1日目昼食 「羽黒山参籠所 斎館」で頂く山伏の精進料理
昼食は三神合祭殿のすぐ近くにある、羽黒山参籠所 斎館へ。
元々は寺院でしたが、明治時代の神仏分離の際に神社の「斎館」として残り、現在では参拝者が食事をしたり宿泊したりする参籠所となっています。
参拝者だけでなく、一般の人も宿泊や食事が可能。
ここでは、山伏たちが修行のなかで編み出した精進料理を頂くことができます。
羽黒山の精進料理は、元々は作物の限られた山の中で生きるための料理として編みだされ、それが現代ではおもてなしの料理として振る舞われるようになりました。
山伏らしい、華美な所のない精進料理といわれていますが、お膳には溢れんばかりのお料理が。
これだけのものを揃え、下ごしらえし、調理するのに、どれほどの手間がかかっていることでしょう。
使われている山菜等は、地元の方が山の中から採って届けてくれるのだそう。
斎館の精進料理にはいくつかの種類があり、今回頂いたのは「涼風膳」。
大きな茄子の田楽につけられているのは、山形の郷土料理であるふきのとうを使ったばんけ味噌。苦味が堪りません。
お膳のメインは、毎日早朝からその日の分だけ作っているという、美味しい胡麻豆腐餡掛け。
コリっとした独独の食感がクセになる月山筍や、鶴岡のみで栽培されている、きゅうり元来の味が残る伝統野菜「外内島きゅうり」の佃煮、などなど……。
海苔に巻かれた鮮やかな紫色は、なんと菊です。山形県は食用菊の生産量が全国1位なのです。
精進料理というと修行のための食べ物で、物足りない、味気ないという印象をもっていましたが、山の植物だけでもこんなにもたくさんの、初めて知るご馳走で溢れているのですね。
出羽三山の与えてくれる自然の恵みの豊かさと、人が自然に生かされている存在であるということを感じながら、ありがたく頂きます。
「食べることは、いわばお山と一体化する修行である」という斎館の料理長の言葉の意味が、スッと心と入ってくるような、心に響く昼食です。
住所:山形県鶴岡市羽黒町手向字羽黒山33
営業時間:11:00〜14:00
TEL:0235-62-2357
宿泊・食事ともに要予約
※庄内空港からの所要時間は車で約47分
1日目午後 花手水に水みくじ!「荘内神社」でお参り
午後は山を下り、人の世界へ戻ってきましょう。
庄内神社は鶴岡市の中心部、鶴岡公園の中に位置します。
花手水をはじめ、境内のあちこちに浮かべられた紫陽花。取材時の7月には七夕の笹の短冊飾りも風にたなびき、境内には親しみやすくとても可愛らしい雰囲気が漂っていました。
実は荘内神社があるのは、もともと庄内藩主の鶴ヶ岡城があった場所。
庄内藩主の酒井家は人々から慕われていた名君でした。
江戸時代が終わり、廃城令によってお城が取り壊された後も、酒井様にこの地を守ってほしいという民衆の願いから、歴代藩主の中から4人の方が御祭神として祀られたのです。
そんな歴史もあってか現在も人々の心のよりどころとして親しまれており、荘内神社の境内には散歩をする地元の人の姿がたくさん見うけられます。
特殊な日や観光のためだけでなく、日常に根付いた信仰の場となっているのでしょう。
季節の花の描かれた月替わりの御朱印や、七夕の期間限定の切り絵の御朱印などの、美しい御朱印も人気の一因。
水に浮かべると文言が浮かび上がる、水みくじという少し変わったおみくじもひけるんですよ。
また、神社の近くには、果物屋さん厳選のフルーツタルトが頂ける可愛いカフェ「フルーツショップ青森屋」や、鶴岡の郷土料理が味わえる「つるおか食文化市場 FOODEVER」、少し足を伸ばせば鶴岡シルクについて知ることができる「松ケ岡開墾記念館」もあります。
宿のチェックインまで、鶴岡市内を観光して回りましょう。
▽鶴岡の市内観光には、こちらの記事もご参考ください▽
1日目夜〜2日目午前 日本の原風景に佇む老舗宿「九兵衛旅館」に宿泊
鶴岡駅より車で20分程のところにある湯田川温泉は、開湯1300年の歴史ある静かな温泉街。
そのメインの通りから少し路地に入ったところに、ひっそりと佇む「九兵衛旅館」は、江戸時代中期に創業し11代続く老舗の旅館です。
客室は僅か13室のみなので、”密”になることもなく安心して時を過ごせます。
落ち着いた館内や、親切でありながらも必要以上に立ち入らない接客は、静かに自分の時間を過ごしたい滞在にぴったり。
綺麗に掃き清められた館内は、スリッパ無しで歩くことができ、まるでなじみの隠れ家にきたかのように寛げる雰囲気が漂っています。
食事が美味しい旅館としても人気のお宿。
夕食と朝食については、こちらの記事に詳しくレポートしましたのでご覧ください。
落ち着いた雰囲気の和室の客室。
窓から庭の緑を眺めながら、冷蔵庫の中に入っていただだちゃ豆のお菓子とフルーツを頂き、ほっと一息。
籐の椅子や陶器の洗面台など、細部も可愛らしいお部屋です。
女性は館内着に、作務衣の他に色浴衣が選べます(お部屋に足袋靴下の用意もあり)。
宿の玄関には下駄も置かれているので、温泉からあがったら、浴衣に足袋でお散歩に出かけましょう。
市街地の煌々とした灯りとは違って、このあたりの街灯には、夜の闇を打ち負かすほどの明るさはありません。
ぼうっと暗闇に浮かび上がる小さな温泉街を、カランコロンと下駄の音を響かせてそぞろ歩く。
メインの通りは1本のみ。通りを外れれば、辺りに漂う土と緑のにおい。
道の横には田んぼが広がり、空を見上げれば満天の星がきらめきます。
初めて来たはずなのに、歩いていくうちに胸の中に懐かしさがこみあげてくる、日本人の心の奥深くに刻まれている日本の原風景。
夏の初めの時期には、徒歩3〜4分のところでホタルを鑑賞することができるんですよ。
ただし、蛍の飛ぶ場所は土手で足元が悪いので、見に行く際は下駄ではなく歩きやすい靴でどうぞ。
翌日もぜひ時間をゆったりとって温泉や読書を楽しみ、時間に追われない癒しのひとときを過ごしましょう。
九兵衛旅館ではたくさんの温泉風呂が楽しめます。大浴場は、露天風呂が楽しめる「山の湯」と金魚の泳ぐ「川の湯」の2つ。その他にも貸切風呂や、徒歩1分のところにある姉妹館「珠玉や」の3つの貸切風呂など。
1泊の滞在では全てを堪能するのは難しいほどの充実度です。
ロビーには藤沢周平文庫もあります。九兵衛旅館は、文豪・藤沢周平が愛した宿でもあるのです。
チェックアウト時間は11時。ギリギリまでお宿を満喫しましょう。